香川県で通称「ゲームネット規制条例」が可決 何が問題か。

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ごきげんよう古川だ。

先程、香川県で「ゲーム・ネット規制条例」が可決された。

これは、

「子供はゲームは1日60分まで! 保護者は子供がネットやゲーム依存症にかからないように務めなければならない!」

という条例だ。

(修正後は基準が目安に変わっているが特に内容に大きな変更はない)

この条例は制定の意図からパブコメ、科学的根拠、違憲の可能性など、多くの点で不可解なところがあり、批判が殺到している。

 

私は各家庭がそれぞれの裁量でゲームのルールを決めるのは当然のことと考えている。

ルールを破ってゲームや遊びをしすぎたあまり、勉強がおろそかになっているのなら、罰としてゲームを捨てるのも一つの教育だと思う。

だがそれは別にゲームに限る話ではなく、外での遊びも、勉強も、全てメリハリを持つように教育するべきである。

そしてその強制力は親にしかなく、教育者たる親の義務と責任によるものであり、行政が強制するのは間違っていると考える。

 

あと、この条例は法律的にも突っ込みどころが満載である。

 

今回は、施行に関わる状況と法律的見解の2つの視点からこの条例を考えていきたい。

条例の意図と、大村議長の思想

さて、このゲーム規制の一番の発端は、香川県議会の大村議長にあると言っていい。

大村一郎議長は、かねてよりゲーム規制についてその個人的感情から「ネット、ゲームの規制」を主張している。

この記事でもわかるように「2時間が限界だと思います」などのように、
その主張には科学的根拠が乏しい

 

ちなみにWHOのゲーム依存症の定義は、

ゲームにのめり込むあまり、日常生活に支障をきたしている状態」を指すのであり、

友達と家に帰ってきてゲームをやる、などというのはゲーム依存症とは呼ばないのである。

パブコメのツッコミどころ

パブコメ(通称パブリックコメント)とは、「ある政策に対し、市民が意見を言うもの」である。

多くの条例案や法案でパブコメが募集されているが、およそ地方議会の条例のパブコメは100件くればいい方である。(今回のように注目を集めている条例などは多くのパブコメが来たりする)

パブコメは基本的にネットで誰でも送ることができるが、今回の規制条例には、なんと2600件ものパブコメが寄せられた!!

そしてその中の実に80%以上が規制賛成派だったという。

(香川県HPより https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/etc/pubcom/upfiles/pty50x200316162057_f01.pdf)

 

しかしパブコメは基本的には「ただの1市民が」「場合によっては匿名で」「何度も」投稿することが可能である。

(香川県のパブコメの出し方の例)

はっきり言って異常である。

というか、そもそもこのパブコメは統計ではなく、

しかも脳医学も法律学も知らないただの市民がテキトーなことを言っているだけである。

故にパブコメをもってして「多くの人はこう考えている!」というのはいささか嘲笑ものである。

パブコメの中身

パブコメの中身もよく見ていただければ分かるように、偏見に満ち、知性が低いと思わざるを得ない内容となっている。

まずコレを見てほしい。

まずこの条例の根拠は感情論から始まってるんですがそれは…

続いてコレだ。

それは親の責任ではないのか?

もしゲームばかりやって勉強が疎かになっているのなら、前述したように、
厳重な注意、そしてそれも聞き入れられなかったら、ゲームを捨てるくらいするべきだ。

それを「香川県はこうだから!」というのは、ただの育児放棄と何ら変わらない。

法規範の遵守は「書いてあるから従う」のではなく、「この法律はこういう意図がある」から守るのだ。

何でもかんでも「法律に書いてあるから」では、親も子もただのロボットだ。

法的に締め上げる

さてここからは本条例を法律的に詰めていこうと思う。

本章では、

・努力規定だけど問題になるのか

・どこが違憲と言えるのか、訴えるにはどうすればよいのか

の順で考えていきたい。

罰則のない努力規定だけど…

さて、努力規定「しなければならない(けど罰則はない)」ということは、果たして違憲立法審査にかけられるのか、という点だが、

おそらく大丈夫なはずだ。

違憲立法審査は特に「こういう条文でなければならない」ということはないので、法規範であれば罰則があろうがなかろうが関係ない。

しかし問題は2つある。

まず、違憲とする根拠の憲法が25条などの所謂プログラム規定説だった場合。

憲法自体が努力規定なので、また別の話で違憲審査が困難になる。

 

そしてもう一つが訴えの利益だ。

日本には憲法裁判所などがないため、訴訟を起こして個別具体的に違憲審査をしてもらう必要がある。

そして訴訟を起こすためには訴えの利益(訴えることによって得られる利益)が必要である・

努力規定であるため、直接の害を受けるわけではない。よって訴えの利益についてはすこし考える必要がある。

どこを違憲か

では次に本条例の何を訴えるかである。

一番しっくりくるのは憲法13条(幸福追求権)だが、これもいささか難しいのだ。

ゲームを1時間以上プレイするのはどういう権利か、みたいに。

とすると私は経済的自由権で攻めていくのが筋だと思う。

本条例の施行によって、香川県でゲームなどを開発、販売する際、購入者は本条例のことを思案するだろう。

それによって香川県でのゲームやネット事業等の経済活動が著しく制限することは容易に考えられる。

(皮肉にも先述のパブコメから「ゲーム規制条例があることで、ゲームが抑制されるだろう」と考える人が84%もいるらしいwwwwww)

本条例はネットとゲームの依存から保護することを目的に制定されているため、その規制目的は消極規制と考えられる。(ここは多分議論が別れる)

消極規制では合理性が必要であるが、本条例には科学的合理性が乏しい。(60分に規制するための根拠は?とか。)

という感じに持っていければよいだろう。

バババッと駆け足で考えたので、いささか不十分だが、もっと詰めればいい感じになりそうだ。

私は憲法はそんなに好きじゃなかったので、憲法クラスタの皆さん、後は頼みましたよ。

危惧していること

さて、私はこの条例に危惧していることが2つある。

それが、

これをきっかけにゲーム、ネット規制がどんどんと加速し、社会の潮流に取り残されたり、自由な活動が制限されてしまう点、

このような科学的根拠がない条例が多く出ることで国内の法規範が嘲笑され、形骸化してしまう点

である。

私は民法と行政法を使う仕事をしているが、はっきり言って日本の行政は世界の潮流から見て遅れていると言わざるを得ない。

例えば不動産の所有権移転の際の書類には本人確認が必要なのだが、これが日本はいまだにハンコを使っている。ハンコなんてもはや3Dプリンターでいくらでも偽造できるだろうが、ハンコ文化をやめられないのだ。(電子署名はあるが、実務では殆ど使われていない。)

こういったことの理由が特定業界の必要以上の保護と老害が跋扈していることだと思っている。

今回のように感情論だけで法律(広義)を制定できてしまうのは、技術革新の芽を毟り、また「ゲームは悪だから規制していい!」のような短絡的思考が拡大し、自由な活動がいつの間にかなくなってしまうのではないか、そしてその行き着く先に法律の威厳さえも失ってしまうのではなかろうか。

私は大変危惧している。

じゃぁ香川県はどうすればよかったのか!

とはいえ、私は先述の通り、ゲームを家庭内でルールを決めることについては賛成である。

「おめぇは一体どっちなんだよ!!!」

と言われるかもしれないが、私は、「ゲーム規制を立法と行政が法律(広義)のもとに行うこと」に反対なのだ。

故に香川県が行うべきは県議会で法秩序として行うのではなく、

教育委員会などを通じて、「ゲーム依存に注意しましょう」的な宣言や、親御に対する講習会などを行う感じにするべきだったと思う。

 

香川県議会には是非反省してもらいたいと切に思う。

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